アメリカ三大トレイルのひとつ、パシフィッククレストトレイル(通称:PCT)を歩いて旅したやまゴリラの旅日記。
PCTはメキシコ国境からカナダ国境まで、アメリカ西海岸を南北に縦走する総距離4265kmのロングトレイル。スルーハイク(全行程をを1シーズンで歩き切ること)にはおおよそ4〜6ヶ月を要する。
衣食住のすべてをバックパックに詰め込み、アメリカの大地を放浪する旅の中でやまゴリラはなにを見て、そしてなにを感じたのか…。
そのすべてを綴った旅日記。
PCT シエラネバダ編 #2
Day44-Day49/Miles 766.3-830.5
トレイルからの撤退
スノーストームによりシエラを一時撤退し、僕たちはビショップの街に降り立った。
トレイルヘッドから最寄りの街はローンパインになるのだが、僕たちのゼロデイは”休養”ではなく”遊び”。
なので少しでも大きい街へ駆り出そうというのが基本的な考え方。
ローンパインからビショップまでは約60マイル、車で1時間程の距離。
この区間は1日2本?シャトルバスが走っていてそれを利用して移動した。
ほんとアメリカ人はたくさんの情報を持っている。当たり前か。

この街ではやらなければならない事がたくさんある。
水没し故障したスマホの契約、寒さ対策のギア購入、新しいバックパックの受け取り、古いバックパックの発送、リサプライ…
それに加えてハイカー仲間とボーリングにビリヤードにバーでパーティ。
精神的にも疲れていたので、2日間ビショップでゼロデイをとったのだが、全く休めなかったというのが正直なところ。
それでもタスクに追われソワソワしながらも、仲間や地元の人たちと時間を共有できたのは良い思い出。



ホイットニー山と仲間たち
シエラ撤退から5日後、僕達はやっとトレイルへ戻ってきた。
遅れを取り戻すべく7泊8日でVVRという湖のほとりのリゾートまで歩く予定。
1日目は見慣れた光景。
そう、歩くのが3回目だ。
バディーたちと『何回歩くねん』とか『前回とは全く違う光景だな』とタラタラ文句を言いながら、1日かけてやっと前回の撤退ポイントへ戻ってきた。
そこからアメリカ本土最高峰のマウントホイットニーへ。
4418mへ高度を上げていくにつれて酸素が薄くなり、いつもよりも時間をかけてなんとか登頂した。


今回は何事もなく快調に進み、順調に思えるが僕には1つ不安材料があった。
それは新しいハイカーがグループに合流したこと。
僕達はターザン、ウォーターボーイ、ゴート(僕)の3人でここのところ旅をしており、彼女は以前から一緒に歩きたい!と言っていたハイカー。
シエラ撤退で後ろを歩いていた彼女が追いつき、一緒に歩くことになったのだ。
何がダメなの?
仲間が増えるのはいい事だ。
しかし、彼女が僕達のペースに合わせられるとは思わない。
彼女と出会ったのはもう1ヶ月程前なので、歩くペースもある程度分かっている。
実際、ホイットニーも途中で断念している。
でも僕がNOという訳にもいかないし、まだ一緒に歩いて数日。
ペースが全てではないし、人間的にはとても素晴らしいハイカー。
マイナスには考えずに皆でハイキングをどう楽しむかを考え、旅を続けた。

しかし、僕の悪い予感は的中してしまった。
ペースが遅い上にトレイルではずっとおしゃべり。
ターザンも僕たちを待たずにどんどん先に歩いていくし、ウォーターボーイはおしゃべりの付き合い。
結局皆んなが揃うのはテントサイトのみで、3人がトレイルで会うことがほとんどなくなってしまったのだ。
彼女に話を聞くと、シエラはすごく楽しみにしていたエリアで1日15-20マイル位を目安に歩きたいとのこと。
急ぐ必要はないわというけれど、僕の考えは違う。
早く長く歩くからといって楽しめない訳はない。
むしろ歩く時はしっかり歩くことで、気持ちにも余裕が生まれ、朝にコーヒーを飲みながらグダグダしたり、お昼のチルを楽しめる。
グループの雰囲気やハイキングスタイルが変わり、『潮時かな〜』なんて思いながらも、1日に20マイルは歩いていたので気にしないようにして旅を続けた。

必然か、はたまた偶然か
シエラネバダのアップダウンに苦戦しながらも、絶景や仲間に囲まれて毎日ハイキング三昧。
こんなに幸せなことはないだろう。
そして僕たちはミューアパスへ到着。
度々、インスタグラムでも写真を目にすることのある有名な峠だ。

この最高のロケーションで僕は2つの再会を果たす。
1人目はBrandon。
彼と会ったのはなんと1日目。
南端のポイントへ向かうバスで一緒になって以来だ。
彼は100マイル程後ろを歩いていたので、正直再会するとは思っていなかった。
スノーストームの撤退がなければここで会うことはまずなかっただろう。

2人目はストレッチ。
彼とはハイカータウンからテハチャピまでの50マイルチャレンジで一緒に行動し、その後のゼロデイも一緒に過ごした。
僕たちがテハチャピで2日目のゼロデイをとる間に、彼は先へと進むとのことで別れて以来だ。
彼はとっくに先に進んでいると思っていたが、大学関係の用事で1週間程トレイルを離れておりまさかの再会を果たした。
もちろんターザンやウォーターボーイとも面識があるので、彼は僕たちと行動を共にすることとなった。

今回のシエラ撤退、時間もマイルもロスしマイナスに考えていたが、それがなければ彼らとの出会いもなかっただろう。
本当にトレイルの出会いはおもしろい。
実際、僕はいまストレッチと2人で歩いている。
彼とはハイキングスタイルや考え方がとても合い、彼も『ゴートとのハイキングはプレッシャーがなくて好きだ』と言ってくれている。
グループに疑問を抱いていたタイミングでこの出会い。
偶然なのか、必然なのか。
それはトレイルを歩き終えた時、判断するとしよう。

コメント
出会いで豊になりますね。”出会うものすべてが私の人生”、禅のお坊さんのお言葉好きです。
いい言葉ですね。
それらの出会いをどのように受け取るかも自分次第ですし、全てが人生、納得です。