パシフィッククレストトレイル旅日記 PCT#15

PCT/パシフィッククレストトレイル
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アメリカ三大トレイルのひとつ、パシフィッククレストトレイル(通称:PCT)を歩いて旅したやまゴリラの旅日記。

PCTはメキシコ国境からカナダ国境まで、アメリカ西海岸を南北に縦走する総距離4265kmのロングトレイル。スルーハイク(全行程をを1シーズンで歩き切ること)にはおおよそ4〜6ヶ月を要する。

衣食住のすべてをバックパックに詰め込み、アメリカの大地を放浪する旅の中でやまゴリラはなにを見て、そしてなにを感じたのか…。

そのすべてを綴った旅日記。

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PCT 北カリフォルニア編 #3

Day76-Day93/Miles 1403.1-2028.1

迫られる選択

トレイルヘッドまでもう数マイル。

街が近づき『なに食べようかな〜』そんなことを考えていると、友人から一通の連絡を受けた。

『煙は大丈夫?どんな感じでスキップするー?』

ん?なんのことだ?

詳しく話を聞くと、カリフォルニア州とオレゴン州の州境付近で山火事が発生、トレイルがクローズになっているそうだ。

クローズエリアまではまだ100マイルあり、『そこまではいけるよね?いけるとこまでいって考えるかな。』

そんな呑気な回答をすると、自分の今いる場所から20マイル先で身動きのとれなくなったハイカー達が救助されたとの情報が。

トレイルエンジェルにも『これ以上レスキューの仕事を増やさないでくれ』と言われんばかりのテンションでスキップを推奨され、それに従いこの区間はスキップすることを決めた。

ここ数日、雲の形を意識してみていたら突然現れた。山火事の影響だそうだ。

さて、これからどうしようか。

街では足止めをくらった20人を超えるハイカーが、様々な場所へヒッチハイクを試みようと道端で親指を立てているそう。

ここでハイカー達は各々別の選択をすることとなる。

・オレゴン州をスキップしてワシントン州を先に歩く

・オレゴンコーストトレイルを歩き、アメリカ縦断にこだわる

・そのまま順に北へ歩き続ける

・家に帰る

僕もこの辺りの選択肢が頭に浮かんだが、オレゴン州の南端であるアシュランドという街へ荷物を送っていたので、バスを乗り継ぎその街へ向かうこととなった。

バスを乗り継いでオレゴン州のアシュランドまで移動。その際立ち寄ったWEEDという小さな街。

友人のハイカーたちに話を聞くと、ワシントン州 or オレゴンコーストトレイルへ向かうハイカーがほとんど。

実際、オレゴン州ではここ数日でも新たな山火事が多発しており、今後もどうなるか分からない状況だった。

日本では馴染みのない山火事。

山火事が発生したらどれくらいで消火するの?

燃え広がったりしないの?

そもそもトレイルのクローズとかって、リアルタイムで管理されてるの?

山火事の中に閉じ込められたりしない?

心配性な僕の頭の中には様々な不安が駆け巡る。

そこで僕は信頼できる友人に話を聞いてもらうことにした。

たわいもない会話の後に本題を切り出すと彼の回答は、

『とりあえず行けるとこまで行ったら?』

不安もありスキップという、安全で大多数がとる選択肢が脳裏をよぎっていたが、この言葉をもらって心のモヤモヤが晴れた気がした。

たぶん僕も順に北へ、ゴールへ突き進んで行きたかったのだと思う。

それにオレゴン州をスキップして山火事が収まったら後で歩こうなんて希望的観測。

目の前に広がっているトレイルは明日どうなっているか分からないし、自然は僕たちのプランなんて考慮してくれない。

自分はただ前を見て進むことしかできない。

いや、それで十分なのでは?

こうして僕の次の一歩が決まった。

背中を押してくれてありがとう、友人よ。

こうしてPCTの旅はオレゴン州へ突入した。。

不安の先にある旅

トレイルに戻った僕は空模様(スモーク)に注意しながら、電波のあるところでは山火事情報をチェック。

今までにないような緊張感のあるハイキングとなった。

『ここ歩くのオレひとりとちゃう?』

そんなことも思っていたが、1日数人のハイカーには出会う。

明らかに前のエリアよりは人数は減っているが、歩いているハイカーは間違いなく存在する。

それだけで少し安心した。

多少の煙たさはあるものの、無事にここ数日で山火事が発生したエリアを抜け、楽しみにしていたクレーターレイクに到着。

クレーターレイク国立公園。湖沿いには多くの観光客が訪れていた。
クレーターレイク。その名の通りまるでクレーターかのよう。

まさに”天空の湖”

そんな景色が広がっていた。

そして、この先は数年前に発生した山火事によるトレイルクローズエリア。

ここで僕は今までに感じられなかった”旅”を感じることとなる。

説明すると複雑なのだが、簡単にいうとトレイルクローズエリアの南端まで歩いていってしまうと街に戻るのが困難になる。

なので手前のハイウェイでヒッチハイクして街へ行ってくださいね〜というのが管理団体からの提案。

(ハイウェイからクローズエリアの南端まで30マイル程)

『たかが30マイルくらいのスキップだし、提案通り手前でヒッチハイクしよう。旅を複雑にするのも面倒だしな。』

と、ここに辿り着く前は考えており、他のハイカーに話を聞いても100%が手前のハイウェイでヒッチハイクを予定していた。

地図を見ると南端まで行ってもサイドトレイルを使って道路へ降りることは出来るようだが、どんなトレイルか距離さえ分からない。

それにそもそもこの道路は開いているのか?

山火事が発生したエリアにピッタリとかかっているのでその情報さえない状態だった。

画像はPCTの地図アプリ『FarOut』馬鹿みたいな地図で申し訳ない。

しかし、ふとこの先を進もうと現実的に考えた時、先の見えない状況にすごくワクワクしてきた。

PCTは大きなアドベンチャーではあると思うが、正直、慣れてくると先が読めてしまうことも多い。

トレイルではGPSに沿って歩き、トレイルヘッドでヒッチハイク。

街の方々も毎年この時期になるとPCTハイカーがやってくることを知っているし、ヒッチハイクでどこに行きたいかもある程度知ってくれている。

ちっぽけではあるがその枠組みを外れて旅をすることに、不安を抱きながらも気持ちが高ぶる自分がいた。

はじめてPCTを歩こうと思った時の右も左も分からないが、”ワクワクが不安に打ち勝つ”そんな感情に似ていたかもしれない。

自分の目で見て、その場で判断し、行動するしかない。

もしかしたら山の中で路頭に迷うかもしれない。

今までの”先が見えない”とは全く違う。

しかし、その不透明な未来にこそ”旅”を感じることが出来た。

口では言っていても初めてではないだろうか?

PCTで心から”旅しるな〜”と感じたこと。

突然現れた岩稜帯。ロッククライミングもさかんだそう。

歩いてみると、そのエリアはデイハイカーも歩いているような山域で、サイドトレイルも明瞭。

確かにヒッチハイクは難航したが道路も開通しており、なんとか3台のヒッチハイクを乗り継ぎ、次の街へ辿り着くことができた。

終わってみると、そんな大したことではないのだが、こういう”選択”をとれたことは自分の中ではすごく大きなこと。

おそらくここを簡単にスキップしていたら、今後、旅の色が全く変わっていたに違いない。

この”選択”をしたことが今後の生き方にも影響を与えてくれるような気さえしている。

誰しも先の見えないことなんて不安だと思う。

けれどその不安に打ち勝って進んだ者にしか見えない景色や感情もあるのではないだろうか。

“2000マイル”

これだけの距離を歩いてやっと色々なことを感じるようになってきた。

残りわずかかもしれないが、今後の旅路に、出会いに、そして自分に楽しみしかない。

このエリアで出会ったハイカー”Long History”に撮ってもらった一枚。

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