2022年5月13日〜9月12日の120日間、アメリカのロングトレイル、パシフィッククレストトレイル(通称:PCT)を歩いて旅したやまゴリラの装備を大公開。
今回はクッカー編。
4ヶ月間、ほぼ毎日トレイルで食事をする中でどのようなクッキングシステムを組んでいたか。
山飯としてメジャーなフリーズドライ食品を選び続けるのは補給の難しさやコスト的にも現実的ではなく、スーパーで調達した食品がメインの食事となります。UL的に「お湯を沸かせばOK」というわけにはいかず、クッカーの形状や素材、容量もケアする必要があります。
今回はそんなクッカーやバーナーの食事まわりのギアレビューをしていきます。
あくまでやまゴリラの主観になり、個人のスキルや経験、感覚によって使用感は異なるので参考程度でご覧ください。
前回の”ウェア編”はこちら。
※やまゴリラがパーソナリティを務めるラジオ「山×旅 マウンテンギア〜現場からは以上です〜」でもこちらのテーマをお話ししております。
興味のある方はApple Podcast または Spotify でチェックしてみてください。

PCT/パシフィッククレストトレイル 装備 〜クッカー編〜
以下、やまゴリラがPCTで使用した食事まわりのギアリストです。

クッカー
PCTでは2通りのクッカーシステムを使用しました。
トランギア ミニセット+自作リッド(南CA)
800mlのノーハンドル平型アルミポットとアルミ板を切り抜いて作成したフタ。合計実測114g。
ミニセットはフライパン兼フタがセットなのだが、PCTでは不要と考えフタを自作した。
自作のフタが10g前後で作れたので約40gの軽量化を図れた。
PCTではインスタントラーメンの他に、米を炊いたり煮詰める調理も想定したため平型のアルミポットを選んだ。
アルミ製で軽量のクッカーは意外と他にないので、アルミクッカーである程度調理したい人にはおすすめ。
GOOD
熱伝導性
あらためての説明は不要かもしれないが、アルミで平型ということで熱伝導率に優れ、燃料の節約につながった。(比較していないので一般論になるが。)
軽量性
アルミで800mlという容量を考えると114gというのはかなり健闘している方だと思う。
チタンとたいして変わらない重量で扱いの楽なアルミを使えるのは非常にメリット。
汎用性
チタンに比べ、調理の汎用性が高い。
煮込みはもちろん、炊飯や水分を飛ばす調理も可能。
歩く期間が長くなるほど、選べる食事の選択肢が増えるのはありがたい。
煮詰める状況でもこびりつくことはなく、食事後の手入れも非常に楽にできた。
チタンクッカーだと煮詰めるような調理だとどうしてもかき混ぜないと焦げてしまう。
BAD
使用感
これは個人的な意見になるのだが、平型ポットのノーハンドルは使いにくいと感じた。
縦型のものなら手ぬぐいや手袋をかませて持ちながら食事をとることができるが、平型なのでそうはいかない。
食事をとる度、不安定なポットリフターで持ち上げなければならないことにストレスを感じた。
実際、ポットとリフターの噛み合わせが悪く、初日にラーメンをひっくり返した。
リッドは0.5mm?0.3mm?(どっちか忘れた)厚のアルミ板をコンパスカッターで切り抜いて作成しました。
一回では切れないのだが何度かその作業を繰り返していると綺麗に切り抜くことができ、最後はサンドペーパーで磨いて仕上げる。
10g前後と非常に軽量でポットに乗せているだけなので風で吹き飛びそうになるほどでした。

エバニュー 400FD(南CA)
容量400mlのチタン製クッカー。実測45g。説明不要の名品。
ミニセットのポットで炊飯をして、こちらのクッカーで味噌汁やスープを作ることを想定。
日本では容量と重量のバランスが素晴らしくマルチに愛用していたがPCTではほぼ出番がなかった。
というのも、そこまで日本食が恋しくならなかったのがその理由。
基本的に味噌汁は趣向品でカロリー摂取が目的ではない。
”食べたい”という理由以外に味噌汁を食べる理由がないのでこのクッカーを使うことがなくなった。
個人的にクッカーは一つで十分だと思う。
SOTO マイクロリフター
実測13gの小型ポットリフター。
このサイズ・重量の割にはポットを掴んだ時の安定感は良好。
個人的な見解だがもう少し小さくて軽いポットの方がバランスがいいと感じた。
実際、日本でJMWのヒルビリーポット550で使用していたが、しっかりと噛み合って安心感があった。
ミニセットには元々ポットリフターが付属しているのだが、サイズ感が少し大きいと感じ、マイクロリフターを選んだ。
VARGO Ti-Lite マグ 750
750ml、実測113gのチタン製マグ。
前述したミニセット、400FD、マイクロリフターを日本に送り返してこちらを購入した。
変更した理由は食事中の安心感と収納性。
どうしてもリフターで持ち上げて食事をすることがストレスでシンプルな縦型マグに変更した。
GOOD
バーナーとの相性
SOTOのウインドマスターを使用していたのだが、それが横に収納できたことが個人的に一番のGOODポイント。
マグ内に110gのOD缶、ウインドマスター、ライターとカトラリー以外の食事に使用するギアを収めることができた。
以前、同容量のTOAKSのチタンマグ(750ml)を使用していたのだが、そちらではバーナーが横に収納ができなかった。
スッペクを比較するとVARGOが96×105mm、TOAKSが95×110mmでVARGOの方が1mmだけ横に広い。たかが1mm、されど1mmとはまさにこのこと。
ちなみにVARGOのマグもハンドルと平行方向でしか横に入らないので本当にミリ単位以下の世界だ。
容量
750mmという容量がロングトレイルの旅には絶妙にマッチした。
主にクッカーで食べていたのはラーメン1.5玉、クノールパスタサイズ、マッシュポテト。
記載のレシピでいくともっと大きなクッカーが必要になるのだが、上記の食事の調理は全く問題なく行えた。
もちろん必要な容量は人それぞれで、何をどれだけ食べたいかによる。
BAD
リッドのつまみ
リッド(蓋)のつまみがプラスチック製なので焚き火で使用する際は注意しなければならない。
ただ、正直そこまで不便には感じておらず、無理矢理BADポイントをあげた感はある。
コストパフォーマンス
類似品と比べて少し高い。
高いよ…って方はTOAKSのものでいいと思う。
まとめ
個人的にロングトレイルで使用するクッカーは最低でも700mlくらいの容量が必要だと思います。
理由は、ロングトレイルを歩き続けると食べる量が増えるということと、街のスーパーでの食料調達がメインになること。
もちろんフリーズドライしか食べない!という人はもっと小さなクッカーで事足りると思うが、金銭的にも現実的ではないと思う。
……スクリューコンテナを併用する場合は小さなクッカーでもいいかな。
自分も途中からtalentiというアイスクリームの容器を使用し、コールドソークで食事をとっていた。(※ 容器に砕いたラーメンを入れて、水に浸すと1時間ほどでふやけて食べられるようになる。)
この容器を使うハイカーは非常に多いが、お湯を注げるタイプの方が合理的だと思う。
バックパックの外ポケットに入り、お湯も注げるこのタイプはおすすめ。
バーナー
SOTO マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター
言わずと知れた名品。
アマゾンの超軽量ストーブ”BRS-3000T”と悩んだが、長旅なので安心感のあるこちらをチョイスした。
GOOD
燃費
朝→コーヒー、夜→ラーメンの湯沸かしに使用、110gのOD缶を8日間使うことができた。
PCTでは1週間以上街におりないことは少なく、OD缶を購入できるので、これで十分かと思う。
安心感
マイクロレギュレーターが搭載していることで寒さに強く、すり鉢状の独特なバーナーヘッドは風のある場所でも安定して使用できた。
温かい食事やコーヒーは安らぎを与えてくれるので、どんな時でも安定して湯が沸かせるのはメリットが大きい。
4ヶ月間、毎日のように使用したが故障することもなく、正直ロングトレイルでは他のバーナーを使う気になれない。
まさにロングトレイルの”食”を支える相棒だった。
BAD
サイズ感
長さ約9cmと収納性に優れるわけではない。
すり鉢状のバーナーヘッドもお世辞にもコンパクトとは言えない。
しかし、これらの形状があの安定感を生み出しているの仕方ないだろう。
チープな五徳
付属している五徳が金属疲労で折れてしまった。
4本五徳がオプションで販売されているが、次回の旅も付属の3本五徳を使用すると思う。
アメリカのアマゾンや他のショップでウインドマスターの3本五徳が販売されているので、折れてしまったらそこで購入すれば良い。
ぼくはゴッサマーギアのサイトで購入した。
主に食べていたラーメン・クノールパスタサイズ・マッシュポテトは水戻しができるので、最悪バーナーが使えなくてもどうにかなる。
PCTではコールドソーク(水戻し)を多用していたので、次回はBRSのバーナーでもいいかなとも思う。(おそらくウインドマスターを使うが.)
25gで収納サイズもかなり小さいので環境を選べばかなり使える。
ぼくも日本で数日間のテント泊にいく時はこちらを使用している。燃費は少し悪い。
カトラリー
トライテンシル スポークミニ
実測11gの軽量カトラリー。
12cmのフォークとスプーンのセットでふたつを接続すると20cmほどの長さになる。
気持ち程度ではあるがスプーンの持ち手部分がナイフになっている。チーズやソーセージ等の柔らかいものなら切ることができた。
ちなみにぼくの使っていたグレーのみ抗菌加工がしてあるそう。
GOOD
重量と使い勝手のバランス
10gほどの重量でコンパクト、食事にストレスない長さでスプーン&フォークを使用することができる貴重なカトラリーだと思う。
PCTで使用してみて特に使い勝手で困ることはなかった。縦長のクッカーでも十分対応可能。
BAD
耐久性
強いてあげるならこれ。約1ヶ月間の使用で折れてしまった。
寒さで少し固くなったヌテラ(チョコレート風味のスプレッド)を無理やりすくおうとしたので、自分の使い方が悪かったとも言えると思う。
UCO ミニスポーク
長さ15cm、重量8.8gのミニスポーク。
使用していたカトラリーが折れてしまったので、街にたまたまあったこちらを購入した。
次回のロングトレイルもこちらを使うことになるかな。
GOOD
使い勝手
何より楽に雑に使える。
トライテンシルのような接続タイプでないので、使用後の拭き取りも簡単。
耐久性
トライテンシルのものよりも耐久性に優れると思う。
約3ヶ月使用し続けたが、まだまだ現役。プラスチック自体の剛性も◯。
BAD
収納性
1本ものなのでパッキングするときに少し邪魔になる。
もちろんクッカーには入らないので、ぼくはインスタントコーヒーや粉ジュースと一緒にジップロックに入れていた。
他のハイカーを見るとチタン製のロングスプーンを使っている人が多かった。
アメリカのフリーズドライ食品(マウンテンハウス等)は袋が大きいので、長さのあるスポークは便利そうだった。
ただ、ぼくは金属同士が擦れ合う音が好きじゃないので、プラスチック製のカトラリーを使っていた。
ウォーターボトル
どれだけ水を飲むのか、どれだけのスピードで歩くかにもよるが、自分は最大6Lを運搬できる容量のものをチョイスした。
乾燥地帯の南カリフォルニアでは水場が1日1回ということもあったが、この容量でOKだった。
ペットボトル
セクションによって本数を変えており、最大で1L×2本、1.5L×1本を持ち運んでいた。
1Lは浄水後、1.5Lは浄水前の水を入れていた。
1.5Lのボトルには後述する浄水器をつけっぱなしにしていた。
理由はいちいちつけるのが面倒なのと、浄水器のパッキン紛失防止のため。
1.5Lのボトルは1Lのものと比較して径が広いので、先に浄水器をつけていても安定していた。
プラティ 2L ボトル
プラティパス社の2.5Lのウォーターボトル。
水場の少ない南カリフォルニアセクションではよく使っていたが、その後はあまり使用していない。
歩きはじめた時は2つ持っていたが、ペットボトルの方が使い勝手がより。
浄水器
ソーヤー スクイーズ
ペットボトルに装着できるタイプの浄水器。
PCTを歩くハイカーの8割以上がソーヤー社の浄水器を使用していた気がする。
ソーヤーの浄水器はスクイーズ、マイクロスクイーズ、ミニと3種類あるが、自分が使っていたのは一番大型のタイプ。
毎日必ず浄水するので、サイズよりも浄水スピードを重視した。
ボトルとの接続部分にパッキンがついており、それを紛失すると浄水できなくなるので要注意。(一応、キャップ側に予備のパッキンが付属している)
また、浄水器とペットボトルをきつく閉めすぎるとパッキンが変形してしまう。
パッキンはアメリカのアマゾンで10個セットで売っていて、紛失してしまった自分はそちらを購入した。
最後に
今回は食事まわりのギアを公開&レビューしました。
やはりそれなにり長い旅になるので、軽量に振りすぎるよりは、ある程度の耐久性や必要なスペック(クッカーの容量など)を見極めるべきというのが自分の意見です。
食事や水は生きるために必要なものですし、トレイルでは1日のご褒美にもなるのでしっかり吟味すべきだと思います。
もし何か質問があればお気軽に問い合わせください。
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