2022年5月13日〜9月12日の120日間、アメリカのロングトレイル、パシフィッククレストトレイル(通称:PCT)を歩いて旅したやまゴリラの装備を大公開。
今回はテント&スリーピングギア編。
4ヶ月間、ぼくに安らぎの場所を与えてくれていた、テント・シュラフ・マットなど、”住”関連の使用ギアを紹介します。
トレイル上の自宅になるギアなので、軽さはもちろん、耐久性や快適性も非常に重要になってくるので、バランスを考えてチョイスすべきと思います。
あくまでやまゴリラの主観になり、個人のスキルや経験、感覚によって使用感は異なるので参考程度でご覧ください。
前回の”クッカー編”はこちら。
※やまゴリラがパーソナリティを務めるラジオ「山×旅 マウンテンギア〜現場からは以上です〜」でもこちらのテーマをお話ししております。
興味のある方はApple Podcast または Spotify でチェックしてみてください。

PCT/パシフィッククレストトレイル 装備 〜テント&スリーピングギア編〜
以下、やまゴリラがPCTで使用したテント&スリーピングシステムのリストです。

テント/シェルター
シックスムーンデザインズ ルナーソロ
居住性が魅力のワンポールシェルター。実測重量720gで1.5人用と言われる広い床面積をもっています。
快適な居住性と安心感があり、このテントと一緒にPCTを旅して本当によかったなと思います。初めて購入したULテントで、PCTへ行く前にさらに軽量のフロアレスシェルターに買い替えようかと思ったが、床があることの安心感と節約のために見送りました。
例えば、500gくらいのフロアレスシェルターに買い替えたとして、重量が720g−500g=220g、その220gを削るために5万円以上のお金を出すことになる。220gなんて背負っちゃえばわからないよね?それくらいの重量、大量の水を担げばいくらでも増減するし。それに高いお金を出すのはアホらしいなって。旅自体にお金を使おうという思考になりました。
GOOD
居住性
まずはなんと言ってもこれ。このシェルター最大の魅力だと思う。
178cmのぼくが就寝するスペースと荷物をすべてシェルター内における広い床面積があります。
ロングトレイルを歩くにあたって、シェルターはリラックスできる自宅のような空間。中でストレッチやマッサージが十分にできるのはかなりのメリットだと思う。
安心感
ルナーソロはシングルウォールテントなのだが、前室・メッシュの蚊帳・ナイロンの床で構成されており、居住空間はジッパーでフルクローズにすることができます。
PCTにはガラガラヘビやトカゲ、他にも数多くの動物が存在するので、外的要因から身を守る意味でもこのシェルターを選んでよかったなと思います。実際、フロアレスシェルターを使っていて朝起きたらバックパックの下にヘビが…なんて話も聞きました。
1日50km歩いてクタクタになる毎日なので、やはり安心感のある場所で眠りたくなりますよね?日本ではビビィやタープで宿泊することが多いのだが、お世辞にも快適とは言えないので、あれを半年間やろうとは思わない。
換気性
乾燥しているアメリカといえどシエラやワシントンは普通に結露します。
ルナーソロは左右両方のドアを全開に広げ、なおかつ虫や動物から身を守りながら寝られるのですごく快適だった。PCT通してほぼ毎晩ドアはオープンにして寝ていました。
BAD
重量
他のULテントと比較するとすこし重たくはなります。
しかし、あれだけの居住性と安心感があることを考えると妥当な重量と言えるかな。
素材
ぼくのもっているルナーソロは旧モデルで素材がシルナイロンのため、雨に打たれると水を含んでかなり重たくなる。
現行品はシルポリ素材なので関係ないんだけどね。
その他の使用感
ジッパーのスライダーが経年劣化で開いてきて、蚊帳のジッパーが閉まらなくなってしまった。
使い出して5年ほど経つのでここら辺は仕方ないと思う。
ちなみにスライダーの両端をペンチで隙間を狭めると、ジッパーが閉まるようになるのでお困りの方は試してみてください。
ポール/トレッキングポール
フリーライト FIZAN TREKKING COMPACT
ハイキング時のトレッキングポール兼テント用のポールとして使用。
トレイルの狭い日本ではトレッキングポールを使わないのだが、そうでないアメリカでは使用しました。
1本160g程と非常に軽量なのだが、4ヶ月間使用したが故障もありませんでした。

ペグ
シックスムーンデザインズ イーストンペグ
SMDのステークセットに入っているペグのひとつ。
重量12g、長さ約22cmと長めのペグで出入り口用にこれをチョイスしました。ルナーソロは構造上、出入り口のペグが抜けてしまうと崩壊してしまうので強度をもたせたかったのがこれを選んだ理由。
PCTで風の強い日はもちろんあったが、ペグが抜けることはなく安心して夜を過ごすことができた。
ちなみにSMDのメーカーサイトを探してみたが現在は販売されていませんでした。
以下のローカスギアのサイトで取り扱いがありました。

MSR ニードルステイク
オーソドックスなペグなのだが、これまた使いやすい。
9gとそれなりに軽量で耐久性と固定力も文句なし。これよりも軽いペグはたくさんあるが、折れたり曲がったりと耐久性に難があるイメージ。数泊の縦走なら問題ないかも知れないが、長期間の使用となると買い替えや買い増しが面倒。
4ヶ月間使用したが、折れや曲がりがなく、どんな地面にも対応してくれる最高の相棒でした。
※現在、MSRで取り扱いがなくなっており、類似品がアライテントから販売されております。
その他 ペグ
他には細くて軽量なネイルペグ・ピンペグを用意して旅を始めたのだが、これが使い物にならなかった。
軽いのはいいのだが、アメリカの硬い地面に対応できず、刺さらない、無理に打ちつければ折れてしまった。軽くても使えなければそれはただの重りになってしまうので、環境に応じたモノ選びが必要と感じました。
このペグは日本では愛用していたが、アメリカの硬い地面に刺さらず、すぐに折れてしまった。


シュラフ/寝袋
ハイカーズデポ ダウンバッグ
ULの聖地とも言えるハイカーズデポのオリジナルダウンシュラフ。
重量555g、ダウン量260gで0℃対応の撥水ダウン使用。
軽さと保温性のバランスが素晴らしいことは言うまでもなく、ロングトレイルを意識して作られたその使い勝手が素晴らしかったです。
GOOD
さまざまな温度域に適応する構造
使用していて一番いいなと思ったのが、ダウンの毛をどちらか横方向に移動させられること。寒い環境ではダウンを片側(上側)に集めることができるので、ダウン量以上の保温力を発揮してくれました。潰れてしまう下側のダウンを上側に持ってきて有効活用しちゃおうってことです。
最近、UL界隈で使用されている、背面に生地とダウンがない”キルト”のような使い方ができるということ。ただし、このダウンバッグは背面生地も連続してあるため、寝返りを打った際に、温められた空気が抜けてしまうことも少なかった。
また、ジッパーが下まで開き、布団のような一枚のシートにすることができます。つまり、暑い夜は掛け布団のように使用することも可能。
PCTで下は0℃付近、上は25℃ほどの夜を越してきたが、使用感にまったくストレスを感じませんでした。幅広い温度域に対応するこのシュラフは、いくつもの季節を渡り歩くロングトレイルにぴったりと言えると思います。
撥水ダウン
これはこのシュラフだから!という訳ではないが、撥水ダウンのシュラフを選んでよかったと思います。
乾燥しているアメリカとはいえ、気温が低くなり、外気温とテント内温度の差が出るシエラやワシントンでは普通に結露する。ぼくは結露しそうなエリアでは、テントのドアをフルオープンにして寝ていたが、それでも結露からは逃れられませんでした。
しかし、撥水ダウンを使用していることから、昼休憩の時に太陽に当ててあげれば、ほんの30分ほどで乾いてくれるので、安心して夜を迎えることができました。
BAD
忖度なしにないと思います。
ぼくはこれからも愛用していきます。

ハイカーズデポさんのサイトに詳しく説明が載っているので、是非読んでみてください。
スリーピングマット
ニーモ スイッチバック(約100cm)
ジャバラタイプのクローズドセルマット。実測重量242g。
自分はピローを使うので肩から太ももくらいまでを覆う長さに切って使用していました。(身長178cm、ちなみにこれ以上切ると少し短く感じました。←経験済)
サーマレストのネオエアーXライト(エアーマット)と迷いましたが、こちらにしてよかったなと思います。
このタイプのマットでは同じくサーマレストのZライトソルかニーモのスイッチバックが有名ですが、収納性が優位だったため、ニーモを選びました。
ちなみにPCTではエアマットを使用しているハイカーのが多かったです。これは西洋がベッド文化だから?と予想しています。
GOOD
耐久性と快適性のバランス
4ヶ月の長旅に耐えられる耐久性と、追及点の快適性が備わっていました。
4ヶ月使用すると流石にへたってはきますが、パフォーマンスが極端に落ちることはまずあり得ません。クローズドセルマットはパンクの心配がないので、精神的にも安心感があります。エアマットにパンクはつきもの。ハイカーが街でパンク修理をしているのを何度も目撃しました。エアマットを選んでいたら、テント内のストレッチなど何かと気を遣ってゆっくり休めなかったと思います。
また、サイドスリーパーの自分でも合格点の出せる寝心地でした。厚みが1cmほどのクローズドセルマットを使うと肩幅の広い自分は腕の血が止まってしまうのですが、スイッチバックは厚みが2.3cmあり多少沈んでくれるので、問題なく寝ることができました。
汎用性
これは日本では想定しておらず盲点でした。
時期や地域にもよりますが、アメリカはとにかく日が長い=行動時間も長くとれます。日本では昼に腰を降ろして休憩することは滅多にありませんでしたが、アメリカではマットをひいて昼寝することもしょっちゅうありました。休憩の質を上げるのも長く歩くには非常に重要で、寝転ぶだけで疲労の回復は早まります。それができたのが大きかったです。
あとただ単に開放的な場所での昼寝は最高でした。
BAD
耐久性?
さっきいいって言ってたやん!とツッコミが飛んできそうですが、これはサーマレストのZライトソルと比較しての話です。
スイッチバックはセルがZライトソルよりも0.3cm厚いが、重量も変わらないという、一見優れているように見えます。しかし、セルの厚みがあって重量が変わらない=マットのコシがないということになるので、Zライトソルに比べてヘタリが早かったように感じます。
まぁ4ヶ月も使っていたら変わらないような気もしますけど。
それにしても数年前に比べてめちゃくちゃ値上がりましたよね…
山と道 ミニマリストパッド(約70cm)
厚さ5mm、重量53gの軽量クローズドセルマット。
長さ約70cm、横幅約45cm(実測重量39g)にカットして下半身用として使用することを想定。
下半身のマットが不要な時は、上半身に使用していたニーモのスイッチバックに重ねて、クッション性をブーストしていました。
たった5mmではありますが、これを重ねることで寝心地がかなり良くなりました。自分は肩幅が広く、サイドスリーパーなので、どうしても薄すぎるマットで寝ると腕の血が止まってしまいそうになるのですが、マットを重ねることでその問題が解消しました。
軽量で収納性にも優れるので、ブースト用のマットとしておすすめです。

サーマレスト Zライトソル(約50cm)
これはシエラ近郊の街でハイカーボックスから頂戴したもの。
高山地帯のシエラは夜の気温が下がるので、ブースト用のマットを探していたところ、ちょうどこれを見つけた。これを拾って以来、手持ちのマットがニーモスイッチバック、山と道ミニマリストパッド、サーマレストZライトソルと3枚になった。シエラの寒い区間限定でと思っていたが、手放せなくなってしまいました。
暖かい時は、上半身にすべてのマットを重ねる。←超快適
寒い時は、上半身にスイッチバックとミニマリストパッド、下半身にZライトソル。
といった具合に気温に応じて3つを使い分けていた。
おそらくUL的考えでは”不要”なものではあるのだが、街のベッドに違和感を覚えるほど、ぼくはこの寝心地に魅了されていました。100g程度でこれだけ快適に眠れるのならいいかと。
シートゥーサミット エアプレミアムピロー
重量79gの軽量ピロー。
以前は同社のエアロウルトラライトピロー(約60g)を使用していましたが、こちらに替えて快適性がかなり向上しました。
重量、サイズ感、快適性のバランスが◎。
マットのところでも書きましたが、自分はサイドスリーパーなので快適な睡眠には枕は必須です。スタッフサックに衣類を詰めるという方法もあるのですが、それだけの余計な衣類を持ち合わせていないので枕を導入しています。
GOOD
肌触り
表面にポリエステルストレッチニットを使用しているので寝た時の肌触りが最高です。特に自分は横向きで寝るので肌が直接枕につくのでここは重要です。
枕選びでは”高さ”が重要視されがちですが、この肌触りというのも快適な睡眠には欠かせないと考えています。
滑りにくい
ここは想定していなかったところなのですが、寝ている時にすべって枕がどこかへいってしまうことがなくなりました。おそらくニット素材の表地がそうさせているのだと思います。
以前に使用していたウルトラライトピローはよく滑っていたので裏側に滑り止めを貼り付けていました。
BAD
特になし。
その他
SOL エマージェンシーブランケット
テントのグランドシート兼、寒さ対策、エマージェンシー用として使用。
日本を発った時はグランドシートにタイベックシートを使用していましたが、シエラに入るタイミング(気温が低くなる)でこちらに買い替えました。その理由は寒い環境の山岳地帯に入るので地面からくる冷気をシャットダウンしたかったからです。そしてこの買い替えがナイスな判断となりました。
ぼくはシエラでスノーストームにあったのですが、その際に体や荷物がビチャビチャに濡れてしまいました。そこでテントに入った時にこのエマージェンシーブランケットを持っていたので、①濡れた荷物やテントの床と自分の仕切り、②自分の体温保持に使用し、難を逃れました。
アルミを圧着しているので自分の体温を反射させて保温してくれますし、生地も保水しないので今回の自分の状況では非常に役立ちました。おそらくこれがなくても死ぬことはありませんでしたが、精神的な安心感を与えてくれました。
軽さだけで見れば他にも違うものがたくさんありますが、他の用途で使用し、安全マージンをあげられるので、次の旅でもこれを選ぶと思います。
最後に
今回はテントやシュラフ等の”住”にまつわるギアを紹介させてもらいました。
長旅となるとやはり安心した睡眠環境が欲しいですよね。自分も軽量だけというよりは快適性や耐久性とのバランスを考えてギアをチョイスしました。(あと値段も)
ぜひ、ご自身のベストバランスを見つけたみてください。
何か質問や疑問があればお気軽に連絡くださいね〜。
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